「ビジネスで日本一になっても、救えない人がいた」 ガレキの前で立ち尽くした優勝者が、六法全書を手に取るまで。慶應法学部 FIT入試 合格ストーリー


高校生ビジネスコンテストの最高峰「キャリア甲子園」で、1万人以上の頂点に立ち、総合優勝を果たした木下さん。誰もが「将来は起業家か? バリバリのビジネスパーソンか?」と思うような華々しい実績です。

しかし、彼女が選んだのは「法学部」、そして「弁護士」への道でした。 なぜ、輝かしいビジネスの実績を捨ててまで、泥臭い法律の世界へ飛び込んだのか? そこには、被災地・能登で直面した「やるせない現実」がありました。


栄光の裏にあった「法律の壁」

木下さんは、ただのアイデアマンではありません。 「キャリア甲子園」では、綿密な調査と三方よしの視点でプランを練り上げ、見事全国優勝を勝ち取りました 。 しかし、そのプラン作成の過程で、彼女はある壁にぶつかっていました。 「被災地支援と廃棄物削減を両立させるビジネス」を提案しようとしたものの、「所有権が不明確な物資を扱うのは法的にグレー(違法のリスクがある)」という現実に直面したのです 。


「いいアイデアなのに、法律が邪魔をして実現できない…」 この時の悔しさが、彼女の心に小さな棘として残りました。


被災地で見たものは、動かせない「絶望」

その棘が確信に変わったのは、祖母の影響で参加した能登半島地震のボランティアでした 。 現場には、道路を塞ぐ家財道具や、今にも崩れそうなビルがありました。しかし、誰もそれを撤去できません 。



理由はシンプル。「持ち主(所有者)が分からないから」。


目の前に危険があるのに、「所有権」という法律が邪魔をして、手出しができない。 彼女は、倒壊した「五島屋ビル」を見上げながら痛感しました 。 「ビジネスでどんなに良いサービスを作っても、この法律の壁を壊さない限り、目の前の人は救えない」



「400人の声」が導いた新しい夢

そこからの行動力は、さすが全国優勝者です。 「じゃあ、どうすればいいの?」を知るために、彼女は動き回りました。


徹底的な取材: 事業開発者など400人以上にヒアリングし、「法律が足かせになっている事例」を集めまくりました。


プロへの直撃: 弁護士のもとを訪れ、「所有権と安全のバランス」について議論を重ねました 。


法的思考の特訓: 模擬裁判に参加し、感情論ではなく「法的にどう解決するか」を学びました 。


彼女が出した答えは、「ビジネスで稼ぐ人」ではなく、「現場の現実に合わせて、法律の運用を変えられる弁護士」になることでした。


彼女が証明した「真のリーダーシップ」

木下さんの合格ストーリーが教えてくれるのは、「自分の武器を捨てる勇気」です。


彼女にとって「ビジネスコンテスト優勝」は最強の武器でした。それをアピールすれば、経営学部や商学部への道は容易だったかもしれません。 でも、彼女は被災地で感じた「違和感」に正直になり、あえて自分の専門外である「法律」の世界に挑みました。


「与えられたルールの枠内で勝つ(ビジネスコンテスト)」ことから、「ルールそのものを作り直す(法律)」ことへ。


この視座の転換こそが、慶應義塾大学が求めていた「社会を先導するリーダー」の資質だったのです。 「実績があるから合格した」のではありません。「実績を捨ててでも叶えたい志があったから」合格した。それが木下さんの凄みなのです。