「キャプテン翼の街なのに人が来ない?」地元・四ツ木の課題から観光政策へ挑む!國學院大学 観光まちづくり学部に合格した、吉村美波さん

「観光地」と聞くと、多くの人で賑わう華やかな場所を想像する人が多いかもしれません。 しかし、吉村さんにとって、それは「世界的な知名度があるのに、人が通り過ぎてしまう」という地元のもどかしい現実でした。
世界累計9,000万部以上を発行する「キャプテン翼」の聖地でありながら、駅で写真を撮るだけで帰ってしまう観光客。素晴らしいコンテンツがあるのに、街が潤わない現状を目の当たりにした時、彼女の心に火がつきました。「もったいない」という感情だけで終わらせず、「なぜ隣の柴又(寅さん)は成功しているのに、四ツ木はダメなのか?」という観光政策の核心(ソフトとハードのミスマッチ)にまで思考を深め、見事合格を勝ち取ったストーリーを紹介します!
教科書ではなく、地元の静けさが教えてくれた「宝の持ち腐れ」
吉村さんの運命を変えたのは、18年間住み続けてきた東京都葛飾区四ツ木の現状でした。
「アニメは50カ国以上で放送されている」「世界中からファンが来るポテンシャルがある」。しかし、現実は厳しいものでした。銅像巡りは2.1kmも歩かされる上に交通手段がなく、スタンプラリーの店は離れすぎている。
彼女は言いました。「観光客にとっては不便すぎる」。土地勘のない外国人や観光客にとって、今の四ツ木の観光施策は「ひとりよがり」に見えました。さらに、街はメッキ工場などの「ものづくり」の誇りを持ちながらも、深刻な少子高齢化が進み、活気が失われつつある。
「資源があるだけではダメだ。それを繋ぐ『足』と『戦略』がなければ街は変わらない」この強烈な原体験が、彼女を「観光政策で地域をデザインする」という世界へと突き動かしました。
「会津若松」の衝撃。地元の限界に切り込む
彼女の凄いところは、地元への不満を「行政への文句」だけで終わらせなかった点です。「成功している街は、何が違うの?」
彼女が注目したのは、「ターゲット設定」と「受入体制」の問題でした。
実際に福島県会津若松市へ調査に赴き、彼女は驚愕します。歴史資源(サムライ)を活かすために、SNSや多言語対応、広域連携などのインバウンド戦略が徹底されていたのです。「資源の有無じゃない。それをどう見せるか、どう回遊させるかという『政策』の差だ」。
彼女は、単に「もっと宣伝して」と叫ぶのではなく、区議会議員の大高拓氏に直接インタビューを行い、グリーンスローモビリティ(地域主体交通)のような「高齢者の足」と「観光客の足」を両立させる具体的な解決策まで模索しました。この「現場主義と政策提言のバランス」が、國學院大学の教授陣に響いたのです。
下町の工場街で知った「観光と生活の共存」
彼女は、観光客を呼ぶことだけがゴールではないと気づきます。
四ツ木は、古くからの工場と住民が暮らす街。高齢化率26.9%という現実の中で、観光客だけが増えても住民が疲弊しては意味がない。
「グリーンスローモビリティ」の調査を通じて、彼女は確信します。地域住民が運転手を担い、高齢者の外出支援をする仕組みこそが、地域の一体感を生む。
一方的に「観光地化」するのではない。住民が安心して暮らせる環境(生活の質)と、観光客が楽しめる利便性(移動のしやすさ)。この両輪を回す難しさを肌で感じたからこそ、「イベント(点)」ではなく「まちづくり(面)」で解決したいという彼女の志は、より強固なものになりました。
›國學院大学で「観光まちづくりのリアル」を学ぶ
彼女が選んだのは、地域を見つめ直す「観光まちづくり学部」がある國學院大学。
1年次からフィールドワークで地域に入り込み、「地域の個性を尊重しながら課題を解決する視点」を養うこと。そして、「公共政策概論」や「観光まちづくり演習」を通じて、思いつきではない戦略的な政策立案能力を身につけること。
彼女の未来予想図はすでに明確です。将来は観光復興が課題となる地域に入り、資源はあるのに活かせていない街を、政策と戦略の力で輝かせるプロフェッショナルになる。その第一歩がここから始まります。
「駅前の記念撮影」を「街全体の回遊」に変える力
半径5メートルの違和感を、持続可能な地域モデルへ
吉村さんの合格ストーリーが教えてくれるのは、「身近な『もどかしさ』こそが、最大の探究テーマになる」ということです。
彼女は、素通りされる観光客を見た時、「仕方ない」ではなく「仕組みを変えよう」と考えました。普通なら「行政の仕事だ」と他人事にしてしまうような大きな壁(インフラ整備や観光戦略)に対して、自ら現地調査を行い、議員に話を聞きに行く行動力。
「地元の小さな商店街」から、「インバウンド戦略と公共政策」まで視点を飛ばせる想像力。それこそが、彼女だけの武器であり、大学が求めていた「地域に根差した解決策を描ける人材」の姿でした。
吉村さんはきっと、データや理論だけでなく、そこに住む人の「生活」と訪れる人の「感動」の両方を大切にする、新しい時代の観光プランナーになるはずです。
