「祖母の喫茶店が教えてくれた、居場所の大切さ」高砂市と世田谷区を比較調査し、楽ちん堂カフェに辿り着いた。日本女子大合格ストーリー
日本女子大学人間社会学部に総合型選抜で合格した、佐奈春希さん
祖母の喫茶店が教えてくれた、居場所の大切さ
昨今、日本は核家族化や個人単位の生活へと変化し、特に都市部では地域社会のつながりが希薄化しています。一方で地方や都市近郊では地域の結びつきが残りますが、高齢化が進む中で高齢者にとって家庭や職場に次ぐ「サードプレイス」の創出は喫緊の課題です。サードプレイスは孤立を防ぎ、心の健康や生きがいに直結するため欠かせません。
佐奈さんがその必要性を実感したきっかけは、祖母の喫茶店の経営悪化でした。この店に来る客の多くは祖母との会話を目的としており、店は客と祖母双方にとっての拠り所でした。常連客にとって祖母との会話は習慣であり、この店が経営難や高齢化によって失われることで多くの人々の居場所が失われることに気づいたのです。佐奈さんは、祖母の店を守ることで顧客や同様の問題を抱える店を救う方法に繋がると考え、自ら行動を起こすことにしました。

足で稼いだ情報が、課題の本質を明らかにした
第一歩として、佐奈さんは店のある兵庫県高砂市の市役所や商工会議所に調査を行いました。そこで分かったのは、市の人口の65%以上が高齢者であり、高齢化と老朽化による飲食店の閉業が増加しており、高齢者向け交流事業は極めて少ないという現実でした。
支援は「空き家店舗等活用支援事業補助金」の案内が中心で、専門家による経営支援の実例は極めて少なかったといいます。多くの市民交流事業が「誰でも参加可能」とうたいながら、実際は児童向けの内容が中心で高齢者が参加しにくい現状がありました。
その後、補助金を活用した飲食店経営者に話を聞き、佐奈さんは馴染みのある地域でこそ高齢者にとってのサードプレイスが実現しやすいと考えるようになりました。インターネットでは得られない、現場の生の声を聞くことで、課題の本質が見えてきたのです。
比較調査が示した、理想と現実のギャップ
第二段階として、佐奈さんは公的取り組みを調査しました。比較のため、自分の住む東京都の事例も調べました。世田谷区には高齢者専用の施設が多く、対象者に合わせた企画が定期的に開催されていました。特に、65歳以上を対象にし、毎日イベントを実施するなど参加しやすい仕組みが整っていました。また、飲食可能な交流スペースが設置されていることには利用者の満足度が高かったといいます。
しかし佐奈さんは、企画性が高くスケジュールも綿密に立てられているため、参加に心理的なハードルも存在していることに気づきました。こうした事例から、高砂市でも既存の飲食店を活用し、定期性のある交流企画を導入することが有効だと考えたのです。
「楽ちん堂カフェ」が示した、理想のサードプレイス
そこで佐奈さんが注目したのが、世田谷区の民営施設「楽ちん堂カフェ」です。地元出身の店主は飲食店という場を超え「第二の家」としての空間づくりにこだわり、「せめて週一で会いましょう」と声をかけて孤立防止に努めていました。
来店日や頻度を強制せず、自発的に行きたいと思える環境が整えられていた点が印象的だったといいます。公的な施設の綿密なプログラムと、民営施設の自由な雰囲気。この両方の良さを理解したことで、佐奈さんの中で理想のサードプレイス像が明確になっていきました。
行動を通じて得た、三つの力
一連の活動から佐奈さんは三つの力を得ました。
第一に「足を使った行動力」です。現地調査を重ね、インターネットでは得られない事実に触れることができました。市役所、商工会議所、実際に補助金を活用した飲食店経営者、世田谷区の施設、そして楽ちん堂カフェ。多様な現場に足を運び、多角的な視点を獲得しました。
第二に「実現可能性に富んだ創造力」です。課題の本質を見極め、着手すべき道筋を整理できました。単に「高齢者の居場所が足りない」という抽象的な理解ではなく、既存の飲食店を活用した定期的な交流企画という具体的な解決策を導き出しました。
第三に「当事者に没入する力」です。高齢者の孤立を自分ごととして理解し、その支援の必要性を深く考えることができました。祖母と顧客の関係を間近で見てきたからこそ、サードプレイスの重要性を実感として理解できたのです。
これらは社会学におけるフィールドワークや調査に不可欠な力であり、佐奈さんは今後の学びに活かせると自負しています。

日本女子大学で実現したいこと
佐奈さんは地方公務員として高齢者のサードプレイス不足問題を解決すべく、地域復興課に所属し、地域の特徴を的確に捉え、資源を有効活用し新たな居場所を作れる人材になりたいと考えています。
この夢の実現のため、日本女子大学人間社会学部での学びを熱望しています。「地域・社会課題を学ぶ」を履修し、授業だけでなく大学の地域連携事業と関わりながら地域の現状、社会課題を学ぶことが可能です。その結果、現地の人々が実際に感じているリアルな考えや感情、課題について理解し、課題の根本原因や解決策を見つける力が身につくと考えています。
また、尾中文哉教授の「比較社会学ゼミナール」に所属し、フィールドワークの方法と地域や過去未来の時間軸について比較することを学びたいと述べています。特に高齢化が深刻な日本と、まだ進んでいないアフリカや南アジア諸国、あるいは居場所づくりに成功した地域と失敗した地域など、条件が異なっているものと比較したいと考えています。そうすることで、新しい視点から解決策を考える力や、違う課題に事前に気づいて防ぐことが可能になると述べています。
合格の鍵となったポイント
佐奈さんの合格には、いくつかの重要な要素がありました。
第一に、身近な問題から社会課題を発見した点です。祖母の喫茶店という個人的な経験から、高齢者のサードプレイス不足という社会的な課題を見出しました。個人的な体験を社会学的な視点で捉え直す力が評価されたと言えます。
第二に、徹底的なフィールドワークを行った点です。高砂市の市役所、商工会議所、補助金を活用した飲食店経営者、世田谷区の公的施設、楽ちん堂カフェなど、多様な現場に足を運びました。インターネットで調べるだけでなく、実際に現場で話を聞き、観察した経験は、社会学を学ぶ上で非常に重要な資質です。
第三に、比較の視点を持った点です。高砂市と世田谷区、公的施設と民営施設、それぞれの長所と短所を比較分析し、より良い解決策を導き出しました。この比較の視点が、尾中教授の比較社会学ゼミナールへの志望動機と自然につながっています。
第四に、具体的な数値やデータを示した点です。「市の人口の65%以上が高齢者」という具体的な数値を示し、課題の深刻さを客観的に説明できました。感情的な訴えだけでなく、データに基づいた論理的な説明ができたことが評価されました。
第五に、自分が得た力を明確に言語化した点です。「足を使った行動力」「実現可能性に富んだ創造力」「当事者に没入する力」という三つの力を自己分析し、それが社会学の学びにどう活かせるかを示しました。
佐奈さんが目指す将来像
佐奈さんの将来像は明確です。地方公務員として地域復興課に所属し、経営難を抱えている店や空き家を活用したサードプレイスの企画・運営に携わりたいと考えています。
地域の特徴を的確に捉え、資源を有効活用し、新たな居場所を作れる人材になることを目指しています。祖母の喫茶店を守りたいという個人的な想いから始まった探求が、地域全体の課題解決へと視野を広げていきました。
総合型選抜で大切なこと
佐奈さんの合格事例から学べることは多くあります。彼女は身近な問題に目を向け、それを社会課題として捉え直し、徹底的に調査しました。この「行動力」が、志望理由書に説得力を持たせる重要な要素となりました。
また、複数の現場を比較し、それぞれの長所と短所を分析する「比較の視点」も評価されたポイントでしょう。単一の事例だけでなく、多角的に物事を見る姿勢が、社会学を学ぶ資質として認められました。
そして、自分が行動を通じて得た力を明確に言語化し、それが大学での学びにどう活かせるかを示した「自己分析力」と「伝える力」も重要でした。
総合型選抜では、「あなたの想い」と「行動」、そして「伝える力」が評価されます。佐奈さんの事例は、身近な問題から出発し、徹底的に調査し、比較分析を行い、自分の力を言語化した好例と言えるでしょう。自分が何を実現したいのか、なぜその大学・学部でなければならないのかを明確にすることが、合格への第一歩となります!
